――泥の道だ。
幼い子供に性的な欲求、というよりは一緒に居ることでの安心感のほうが強かった。性欲は二の次だった。
だからあの子が汚されたと知ったとき、あんな感情をいだくとは思わなかったのだ。


                       ――

「キスして!」
最近はいつもこうである。私が唇にキスをしたのがよほどお気に召したのか、どんなお菓子より欲しがる。
私はわざとらしくため息をついてそれを拒否する。
「子供にキスはできない」
「前はしてくれたよ」
「お前が泣いていたからな」
「じゃあ泣けばまたしてくれる?」
「馬鹿なことを言うな」
…疲れる言い争いだ。
この子供のどこがいいのだろう。確かにとびぬけていい容姿はしてるが、それだけだ。勉強もなにもそこそこで特別気遣いができる訳でもない。
「…いじわる」
「大人は意地悪だからな」
そういうと怒って走り去ってしまった。
…それを可愛いと思ってしまう私も、相当重症だ。


「それで、ユリシアちゃんは置いてきちゃったの?」
「酒の場にあの子をつれてくるわけがないだろう」
「僕は会いたかったのに」
「レイリア!」
『麗しの男爵』はおもしろそうに私を見た。
「というか前から疑問だったんだけどさ、ユリシアちゃんの親は君と暮らしてることに何も言わないの?」
「親は死んでいる。肉親は2歳年上の兄だけだ」
――思い出す
あの子の親には幼いころに世話になった。私は葬式に行った先で恋に落ちてしまったのだ。
涙をためたあの瞳に、射貫かれてる。
「…ふーん、複雑なんだ」
――でもそれってユリシアちゃんがもう逃げ場がないってことだよね?
…図星だ。
彼にはもうにげる場所はない。兄は幼いし親族は名前すらあやふやだろう。引き取り手がいなかった彼を強引に連れてきたのはほかならぬ自分だ。
最初はただ側にいてほしかった。あのやかましさや健気さが心地よかった
なのに

『ミシェ、ルなら…全部、気持ちいい…ぁんッ!』
そう言って喘ぐ幼かったはずの子を冷静には見れなかった。
泣き叫ばれてもいい、ナカを暴いて欲望を突き立てたい。泣く彼を無理矢理に犯して孕ませたい。あの子の体ならそれができる。
だが、なんとか理性で平気なふりをして彼を眠らせた。
そのあとに彼で所謂素股をして抜いてしまったのは地獄に持っていくつもりである。

「なーに思い出してんの?」
「お前には関係ない」
「あっそ!」
レイリアは不機嫌そうに言った。
「――それより、例の強姦魔どうしたの?」
「…一生日の目はみれないな。いや、表に出てもそれすら認識できないのか?」
そう言って喉を鳴らして笑うと、レイリアは気味悪そうにした。
「ま、ユリシアちゃんにバレないようにしなよ。完全にドン引きだから」
「抜かりはない」
…彼を虐げるもの、彼を悲しませるものはすべて取り除こう。
たとえそれがどんな結果を生んでも、どんな手段を用いてもすべてを消し去る。
そう、どんな手を使っても。
――私だけがあの子を幸せにできるのだから。
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