クローデット過去編


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「今日こそ我が妻に…!」
「間に合ってます」
クローデットこと僕はその申し出にきっぱりと断った。
こういう知らぬ魔人たちからの求婚は今に始まったことじゃない。この魔界に落とされてから毎日のように続けられている。

そう、魔界に落とされてから

三年前のある昼、天使であった僕は言いつけを破ってかぎりなぐ人間達が住む大地に近いところまで降りてきていた。次期大天使として期待されていた僕はほかの天使より数倍勉強させられうんざりしてたのだ。
「ふーん、ここが現界かぁ」
色とりどりの人間たちが楽しそうに生活していた。
展開は白とか金とか銀だとかそんな色ばっかりだからあまり色鮮やかではない。初めて間近でみた人間の世界は思った以上に楽しそうだった。
腰まである長い白銀の髪を弄りながら僕は楽しそうな人間をつまらなそうな顔で見ていた。だって僕自身が現界に降りれるわけじゃない、天使として失格かもしれないけどちょっと妬ましい。

「ってなにこれ!」

ぼんやり人間を見ている間に足元に真っ赤な魔法陣が現れて驚いて逃げようとした僕に糸のように絡み付いてくる。
「ちょ、ちょっとぉっ!」
僕はどうすることもできずその魔法陣に引き込まれていった。


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「君が、天使様かな?」
「…そういう人間くんは何者?」
この僕を拘束してまで無理矢理召喚するなんて
前に佇んでいる青年は金色が混じった栗色の少し長い髪に空色の瞳、美しいがどこか胡散臭い笑顔を浮かべている。
「天使とか神様とか大嫌いだから復讐してみた、っていったら怒るかな」
「…僕を売り飛ばしでもするつもり?」
「そんなことするわけないじゃないか!」
―そんな生温くて優しいことするわけない
そう、美しい青年は言った。
僕はすぐさま天使が緊急時のみ使える攻撃魔法を起動させる。だが、この男は規格外だった。
すべての魔法がたかが人間の使う魔術に発動寸前で打ち消される。
羽で飛ぼうとしても拘束されているせいでうまくいかない。いわば捉えられた鳥だ。
「白銀の髪に真っ赤瞳…伝承通りだ。美しいね」
壊れ物を扱うように、髪を梳かれる。僕は嫌悪感に身震いしながら男を睨みつけた。

「ほら、今から楽しいことをするんだからそんな顔しないでよ」

ここからが地獄のはじまりだった。

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「ひっ、やめっ!」
地下室に引きずられたと思いきや服を全部脱がされ拘束される。
ギリギリ足がつくかどうかのところで両手を縛り上げられ身体がギシギシという。
「こっちの毛は生えてないんだね」
そういって、性器のまわりの撫でられる。
僕は嫌でもこの男がいまからなにをしようとしているのか分かってしまった。
恐怖で奥歯が震える。そんなことされたら、僕は天使として生きていけない。
家全体に男以外の魔法・魔術を打ち消す術がかけてあるのか、先程から狂ったように魔法をつかっているが何一つとして起動しない。
「…そんなに魔法を連発しちゃ体力が持たないよ。いまからもっとつかれることをするのに」
男は棚をがさごそとあさり瓶に入ったピンク色の液体をもちだした。
「とりあえず君のためを思って言っとくけど、これは飲んどいたほうがいいよ」
口元に押し付けられる瓶を僕は必死で拒んでると男は観念したらしい。
「そっか…まあ僕の時もこんないいもの使ってもらわなくて次第に気持ちよくなったしね。天使様もそこまでせいぜい頑張ってね」
男はどこか嘲るように笑うと一瞬で瓶を炎で燃やしてしまう。
「じゃ、はじめよっか?」


「いやぁっ、いたいっ、やめてっ!」
「もっときつくするか…」
胸の先端をネジのようなものがついたクリップのようなもので挟まれてきつく締め付けられる。
はじめは少し痛いぐらいだったのに男がネジを巻くたびにその重さと締めつけで先端が悲鳴をあげていく。
「いたいよぉ…なんで…いやぁ…」
乱暴など働かれたこともない僕は泣き出してしまう。そんな僕を男は呆れたように見た。
「だから薬を飲んでおけばよかったのに」
すっかり充血した先端を男が無遠慮に触れるたび僕は体を跳ねて悲鳴をあげた。

「次はこっちだよ」

そう言って自分で触ったこともない、ありえないトコロに男のカサついた指先が触れた。
「やっぱり天使は性行為とかはしないのかな。初心で綺麗な色をしてる」
足を必死でとじても臀部の肉を割られソコを凝視される屈辱に涙と怒りが止まらない。
突然、濡れた感触がソコを撫でる。
男は臀部に顔をうずめてソコを熱心に舐めていた。
「ひゃぁ、いやっ、変態っ、やめてぇ…!」
背筋がムズムスとする。
男のありえない行動に僕は逃げたいのに拘束されているせいで逃げれない。
「こうしといたほうが、流血沙汰は避けれるからね…」
「うう…!」
ナカまで入ってきた舌を僕は必死で追い出そうと力むけど指を使われてナカが見えちゃうんじゃないかと思うぐらい広げられる。
「…めんどくさいしここまででいっか」
男は何分か舐めたあとそんなことをつぶやきながら無表情に貼り付けたような笑みを浮かべてズボンの前を広げた。
「ヒッ!」
「可愛いなぁ…怯えちゃって」
男の芯をもった太いソレをみて僕はもう逃げられないとわかってるのにどうにか逃げようと体を動かす。
「最初に薬を飲ませてあげようとしたのに、断ったのは君だからね。本当に、天使様って可哀想」
嘲笑、そのあとに男のソレがググッと狭いソコに入ろうとしてくる。
当然そんなの無理でソコは引き攣れて悲鳴をあげてるけど男は構わず腰を進めてくる。
ナカが切れていくのを焼け付くような痛みで感じる。声にならない悲鳴が喉を通りすぎる。
「ぁッ…!」
「ここがいいところかな」
ある一点を先端で押された瞬間、僕は痛みの中にわずかな快楽を感じてしまった。
「俺は優しいから天使様のイイトコトをたっぷり虐めてあげるね」
緩く出し入れをされる。時折、その一点をえぐるように突かれると僕は身体中がカッと熱くなるのを感じた。
「ひっ、ぁっ、んっ」
「そう、いい感じだよ」
男は次第に激しく腰を振る。男の腰と臀部が激しくあたって音が鳴る。
僕は痛くて辛くて屈辱的なはずなのに緩く襲ってくる初めての快感に脳が犯されていくのだった。


「はやく真名を教えてよ。君の事気に入っちゃったんだ」
「だ、れが…ひぃ!」
「君が意地悪言うと俺も意地悪しちゃうなぁ?」
後ろに入れられている淫具を男は無暗唱の魔術で動かす。
数日感こうして責められている僕の神経はもうズタボロだった。
だけど真名だけは明かせない。それを明かしてしまったら完全なる隷属を意味する。
僕はここの数日で後ろで快感をとるやり方を叩き込まれて今では慣らさずに淫具を入れられたまま一人で盛ってしまうぐらいに浅ましくなってしまった。
「乳首も女の子みたいに腫れてきちゃったね」
相変わらず胸の先端は男が好きなようで必要以上にいじめられている。
だが昨晩、何を思いついたのか男は武骨なクリップをはずして宝石の装飾具をそこにつけた。クリップよりも華やかで重いそれは一晩中僕を苦しませた。
「今度は鎖がついてるのとかもいいかもね。君が悶えるたびに鎖がシャラシャラとなるの、いい感じ」
馬鹿げたことを言う男を睨む気力もない。
そして気まぐれのように淫具を振動させる。
「ねぇ…はやく真名を教えてよ」
「いやっ、あぁっ、はぁぅ!」
淫具を男の手で出したり入れたりされ、僕はひどく悶えた。

「教えてくれないならいいよ。俺にも手があるから!」

子供のように、すねた声を出しながら男はまた地下室にある棚をがさごそと探し漁った。
「あーこれこれ」
出てきたのは、気力が削ぎれて魔力を感じづらくなっている自分でも見た目だけでやばいとわかる代物だった。
「人魚の鱗と天使の肌でつくった魔術書なんて、悪趣味だよね」
それを持ってる男はもっと悪趣味だ。
「俺が集めたわけじゃないんだけど…『師』もたまには役に立ってくれたね」
「…?」
「こっちの話だよ」
たまに、男は無表情になりゾクッとするぐらい冷たい声を出すときがある。僕はそれがろくでもないことの前兆だと数日で気づいたいので怖い。

「じゃあ、君の真名を明かしてもらおうか」

男は呪文を唱え始める。
長い、何分も続いたその呪文は進むにつれ僕の体の周りに巻きついてくる
「な、なに…これ…!」

『聖なる落し子よ、我に隷属せよ』

最後の呪文が終わると同時に、僕の体は焼けつくように熱くなり悲鳴すらままならない
男はそんな僕を笑いながら見ている。

「じゃあ、君の真名をもらうよ」

男の手が伸びて心臓の上を触れる。
そして、体の中に腕が入っていき心臓を掴む。
あまりの痛みに声もでず呼吸すらできない。

『答えたまえ、我は禁を犯すもの、我は全てを奪うもの』

男の呪文が心臓を締め付けてくる。
いたい、いたい、いたい、いたい!

「ふーん、君の真名はクローデットフェアラスか…クローデットでいいよね?」

「な…ん、で…」

『隷属の印を授ける、クローデットフェアラスは我の手足となり全ての盾となれ』

―よろしく、クローデット

そう言って微笑んだ男の壊れた笑みを、僕は死んでも忘れないだろう。
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