「…ッぁん、はッ、あぁ―!」
―誰の声だろう。ひどく艶かしく…
体は熱とふわふわとした感覚で気持ちがいい。
なんだろう、尻に異物感が…
ゆっくりとぼんやりした頭で目を開けると―

「―ようやく目覚めたか我が勇者よ」

朱と蒼、二つの瞳と精悍な顔が飛び込んできた。
「んッああッ、おまッぁ、なッ!」
「ほれ、そう締め付けるではない。精ならすぐくれてやる」
覚醒した頭で気づいたのは―この男に犯されているということ
甘く快楽に震えてる(認めたくはないが)体を必死で動かして逃げようとするがこの男、かなりの怪力なのか腰を掴まれて逃げられない。
くそッ、俺は成人男性の平均よりデカいはずだぞ?女性にもモテまくってたはずだぞ?なぜ男に犯されてんだッ!?―意味のない走馬灯もとい元カノ達が頭のなかを駆け巡る。
王子様みたいだとか白馬の貴公子だとか中性的で野蛮じゃないところが素敵だとか…なのにいまなぜ男に犯されてる?
パニックになった俺に気付いたのか男は不機嫌になった。

「ほかの事を考えるとは…よほど足りないようだな?」

尻の中にはいってる異物(考えたくないし認めたくないが多分この男のもの)が酷く突き上げてくる
「ああぁッ、はぁん、やめッぁ、ああ!」
く、悔しいけど滅茶苦茶きもちいい…!
嗜みとしては知っていたけど男同士ってこんなに気持ちいいものなのか
「ッ出すぞ!」
「やぁッああぁん!」
知らない男に中出しされてしまった…!
熱いものがドクドクと一番深くて絶対だめなところに入ってくる。気持ちわるいはずなのに体中の疼きが収まってきてどこか安心する。

全部出し終わったのか男は浅く息を吐いた。
「さて、勇者よもう一回――」
「…おやめください魔王様。初めてで精を過剰に受けるといくら勇者といえ死んでしまいます」
落ち着いた、例えるなら霧雨のような声が聞こえる。
ああ、なんだほかの人もいたんだ…後から考えるととんでもないことだが俺はこの本能的に何かを感じてる男と二人きりじゃないことに安心した。
「チッ…後始末をしとけ。また夜に来る」
「了解しました。あとその前に誓いの呪を交わしていただかなければ」
「めんどくさいが…いいだろう」

「勇者、お前の名はなんという?」

「名…?―ッあぁ!」
ぼんやりとした頭では上手く考えられなくて聞き返すと男はイラついたように突き上げてきた。
「早く答えろ、殺されたいか」
「しゅ、シュウナ・ジェイ・アルドラム―」
怯え、じゃないがこの男には逆らってはいけないという本能が音を鳴らす

「シュウナ・ジェイ・アルドラム、魔王サタナスとの契によりお前を゛勇者゛とする。我に隷属し服従を誓い犯されろ」

男の手が汗ばんだ俺の頭を掴む。
そして、唇が重なる

「んッ…ぅ…ぷはッ」

いきなり舌を入れて唾液を飲ませてくるような礼儀もマナーもない激しいキス。
―男の唾液を飲み込んだ瞬間、完全に俺は何か別のものになってしまったのを頭の片隅で感じた。

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