「―わぁッ!」
…目が覚めた。
覚醒した瞬間認めたくない記憶がドバドバとコーヒーに入れる砂糖のように入ってくる。
あんな、あんなコトをされたのに体はいたって快調でどちらかというと良すぎるくらいだ。
慌てて辺りを見渡すと人の気配はなく、どこか重苦しい雰囲気を漂わせる重厚な部屋のベットに寝かされていた。
「どこだ、此処…?」
誰に問うわけでもく出る言葉に当然返事はない…はずだったが
「魔国王城ですよ、勇者・・ 」
「何者だお前」
やけに血色の悪い顔に朱色の瞳が不気味な男―悔しいがそれでも美形―が少し距離を置いて立っていた。
気配がまるでなかったことに警戒心は高まらざる負えない。
それに、こいつは『勇者』といった。残念ながら俺はそんなファンタジーな生き物でも名前でもない。
「随分と今回のは強気なんですね…。」
「質問に答えろ。何者で此処はどこだ」
「だから魔国王城だといってるでしょう、そしてあなたは勇者だ」
…意味がわからない。
魔国、国の名前か…?
そんな国聞いたこともないし王城、そんなところに俺が居る意味もわからない。
…勇者、さっきから連呼されてるこの言葉はどう考えても名詞であの、ドリームな勇者のことなのかもしれない。
「…勇者勇者といってるが、まさか魔王だとか魔界だとか言い始めたりしないよな、おまえ?」
「残念ながらここは古い人間の言う魔界で旧魔王城で魔王様が治めていらっしゃる、ご期待に沿えましたか?」
―最悪だ。
コイツが頭のおかしい狂人でないかぎり、俺の昨晩からの記憶が狂っていない限り、とりあえずは本当のことを言っているのだろう。
「―ああ、望み通りの答えだよ」
「それはよかった」
憎らしいほど綺麗な笑みで顔色が悪い男は微笑んだ。
「で、俺は何をすれば元の世界に帰れるんだ?大抵こういう物語ストーリーは魔王を倒すなり世界を救うなりして帰れるんだろ、なぜか最初からゴール地点だけどな」
「いえ、誠に残念ながらあなたは帰れません。えェ本当に残念ですが」
「はぁッ!?」
「あなたにやっていただくことは魔王様の精を受け止め魔力を循環させること。ぶっちゃけ、ただの性欲処理ですね」
「―意味がわからないんだが」
「つまり、あなたは魔王様に犯されながらどうにか死ぬ機会を待っていてください。勇者であるあなたには加護がついていますから自死はできませんが魔王様に殺されることはできますからね!」
「―なんの慰めにもならなすぎだろう…」
「慰めるつもりはありませんからね」
顔色の悪い美形はニヤァと笑った。…こっちが本性の気がする。
「これでも私は温厚ですよ。あなたのいう魔界、つまりは魔国には人間なんて雑草と変わらない扱いをするもので溢れかえってますから。」
「お前は雑草に話しかける狂人というわけか」
ヤケになって嫌味を言う。
「―ええ、それに雑草を愛でる狂人でもあります。まぁ、それは魔界のものにとっては普通のことなのですが」
「―は、…おまえッ!?」
有り会えない強さで寝台に体を押したおされ押さえつけられる。
「いただきまぁす」
男はそう言ってニヤァと笑った。
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